北方世界で狩猟採集・交易民として独自の文化を営み、長年暮らしてきたアイヌ民族の歴史・文化・社会がわかる、初めての総合辞典です。「ひと」・「もの」・「こころ」の3部構成で、歴史をはじめ、考古資料や民具に基づく物質文化や言語・口承文芸・儀礼の精神文化など、約1000項目を図版も交えてわかりやすく解説しています。北海道白老町の国立アイヌ民族博物館(ウポポイ)の開設や大ヒットマンガのゴールデンカムイの影響もあり、アイヌ文化はかつてないほど注目が集まっています。アイヌ民族の歴史や文化に関する正確な知識を得る上で、地図・年表・索引など付録も充実している本書は、たいへん役に立つでしょう。
明の郝敬(かくけい)の『毛詩原解(もうしげんかい)』の校訂本である。郝敬(1558〜1639)、字は仲輿、湖広京山(いまの湖北省京山)の人、明代後期の儒学者・思想家。中国最古の詩集である『詩経』は、古来難解の書とされてきた。それに対して、郝敬は平易な漢文で解説を行い、独自な観点から鄭玄や朱子などの注釈を批評している。『詩経』を読むための参考書のみならず、郝敬ないし明代の詩経学を知る重要な著書である。 本書は『毛詩原解』の諸本を考察したうえで、郝敬晩年の定説を反映している「後印本」を底本として、諸本と比較し、校訂したものである。郝敬『九部経解』の一冊として中国の「全国古籍出版社百佳図書賞・一等賞」を受賞した。
中国伝統医学は、早期治療、予防医学または長生術、養生法、美容術といった多方面の研究に取り組み、道教、仏教、術数学と相互連関することでユニークな文化複合体を形成した。本書では、文理横断的な視点において具体的様相を探り、東アジア世界に開花した医療文化の構造的把握に挑む。京大人文研拠点共同研究の成果論文集。
永楽帝は明朝(1368~1644)の第三代皇帝である。しかし、その即位は激烈なものであった。父帝は初代皇帝の朱元璋であり、その第4子として生を受け、第2代皇帝の建文帝との足掛け4年の内乱(靖難戦役)を征して皇帝となった。このため、旧建文政権時代からの官僚が大半を占める宮廷では、権力基盤が脆弱であったとされてきた。しかし、靖難戦役を通じて形成した自前の軍隊(燕王軍)を基軸とする軍制改革を行うことで、国軍は永楽帝の権力基盤となり、政権運営では側近政治を徹底することで主導権を握り、外征では燕王軍出身の将校が中心となって永楽帝を支えたため、永楽帝は強力な指導力を発揮することができたことを示した。
14世紀から16・17世紀にかけてのアジアにおいては、明朝・ティムール帝国・オスマン=トルコ朝・ムガル朝・李朝及び室町時代の日本など、多かれ少なかれモンゴル帝国のDNAを受け継ぐ勢力が併存する世界が出現した。この時代の根幹となる人物の評伝を積み重ねることで、時代の特質に迫る。本邦初の人物評伝の集積により描く本格的アジア通史全編書き下ろしの第6巻である。
16世紀に始まった宗教改革では、さまざまな考えを持つ集団が次々に生まれた。神聖ローマ帝国で「異端」「反乱者」として迫害されていた再洗礼派もその一派である。しかし、ドイツ北西部ヴェストファーレン地方の中心都市ミュンスターでは、この再洗礼派が、1534年2月以降都市を支配し宗教改革を実行した。では、いかに再洗礼派は、市内で起こった激しい宗派間争いの末、敗北と紙一重の勝利をその手に引き寄せたのか?市内には多様な集団・社会階層に属する人々がおり、様々な動機に基づき自らの態度を決めていた。本書は、彼らの多様な思惑と行動が、複雑にもつれ、絡まりあいながら、ミュンスターの宗教改革運動を思わぬ方向へと導く過程を描き出している。
人口減少に転じた日本社会の行く末を、地方(自治体の)消滅と予測した増田寛也のベストセラー『地方消滅-東京一極集中が招く人口急減』(2014)の提言を真摯に受け止めた、地方在住の7名の経済学者たちによる応答である。青森県は、早ければ2040年代前半にも、現在の人口125万人から3割も少ない80万人時代に突入することが予測されている。執筆者たちはそれぞれの専門の立場から緻密なデータ分析に基づいて、来るべき人口80万人時代を「強く、豊かに」生きていくための「手がかり」と「道しるべ」を提供する。本書は、地方の新たな可能性を追求した希望の書である。
150年前津軽に導入したりんごはこの地でさまざまなイノベーションをへて大きく変貌してきた。青森りんごといえば「工芸品」と評されるほど格別な存在となっている。この本は品種開発や栽培、流通、加工、サポーティングなど五つの視点から各分野のキープレイヤーに対する聞き取り調査を行い、世界最高水準に至ったプロセスを明らかにしながら、21世紀初頭における青森りんご産業の断面を描きだしている。
本書は、青森県を基盤に活躍する起業家(本書では、じょっぱり起業家と呼ぶ)を事例とし、企業戦略コースの経営学関係の教員の学術的知見と、じょっぱり起業家の方々の実務的知見を組み合わせた書である。2部構成となっており、第1部では研究者による概念の説明、第2部では事例編としてじょっぱり起業家の講演をまとめている。 本書に掲載されている起業家は、木村聡氏(八戸せんべい汁研究所)、岩渕伸雄氏(FUNKY STADIUM)、坂本崇氏(弘前観光コンベンション協会、所属は講演時のもの)、佐藤拓郎氏(株式会社アグリーンハート)、小山優子氏(企業組合JT & Associates)の5名。本書を通して、青森県を元気にするためのヒントを得ることができる。
細胞を増やして作る「新しいタイプの肉」の販売が海外で始まっている。この新しいタイプの肉(培養肉、細胞性牛肉)は、環境に良いという理由で注目が集まっているが、実際に社会の中で活用していくための議論は始まったばかりである。培養肉にはどのような種類があるのか?いかなる技術が用いられているのか?日本の強みは?人々の反応は?どのような社会的影響がありうるのか?技術開発を担う研究者と社会の反応を調べる研究者がともに執筆し、テクノロジーの最新動向を分かりやすく解説した入門書である。 第1章 なぜ今、培養肉なのか?/第2章 培養肉のつくり方/第3章 培養肉への期待と不安/第4章 立ちはだかるハードルの数々
恋愛は喜びや楽しみと同時に、強い悲しみや苦しみも生み出す可能性のある不思議な現象です。この不思議な現象について心理学はどのようにアプローチし、何を明らかにしようとしているでしょうか。この書籍では、日本で収集されたデータに基づく研究を紹介しながら、恋愛普及幻想、浮気、恋愛へののめり込み、失恋、DV、婚活、同性愛など様々なテーマについて考えていきます。なんとなく身近に存在する恋愛についてあらたに考える機会になるとともに、自分が恋愛についての研究を行うためのヒントにもなるはずです。