弘前大学人文社会科学部
社会経営課程 地域行動コース


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社会調査実習 担当教員

曽我 亨教授

学生たちによるインタビュー

先生の専攻は何ですか?

文化人類学とかいうのはよく聞くと思うんですけど、僕は「生態人類学」を専攻しています。人々の日常的な暮らしや生き方に焦点を当て、明らかにする学問です。元々は食べ物の研究で、「人間が何をどれだけ食べて生きていて、その食べ物をどのように手に入れているのか」とか、「その食べ物をどのように分けているのか」だとか、そういうことを研究していました。

その分野を研究しようと決めた理由を教えてください。

元々僕は大学で理学部に在籍していて、4年生のときの卒業研究を臨海実験所でやっていました。そこでウニとか海産物を相手に実験するなかで、そのウニを獲っている漁師さんたちの姿を横目に見ていて、自然相手に駆け引きする人たちの暮らしって面白いなと思い始めたんです。そういう自然との駆け引き、自然に対する知恵みたいなものを学べたらいいなとぼんやり思っていました。そしたらふと「そういえば人類学とかいう学問があるな」と思い出したんです。そして伊谷純一郎先生がお書きになった『ゴリラとピグミーの森』という本を読んで、アフリカで自然と格闘しながら生きる人々のことを研究できたらいいなと考えるようになりました。そこから方針を一気にずらして、研究室の中で実験するよりも、むしろフィールドに出て研究したいと思うようになりました。けど実際にフィールドに出てみたら、思っていたより何もできなかったことが衝撃的でしたね。実験室の中は全部手法が決まっていたからそのとおりにやれば良かったけど、初めてフィールドワークしたときはまず何をしたらいいか分かりませんでした。

今はどのような調査を行っていますか?

アフリカの牧畜民を中心に、人と家畜の関係について調査を行っています。
初めはどうしても調査者という立場で現地の人々と接していたので、どこか距離があったように感じます。けどだんだん調査とは関係ないどうでもいい話もできるようになって、アフリカの楽しみ方、人々とのつきあい方がわかってきてからは馴染めるようになりました。牛の皮をひろげ、現地の人と寝そべって星を見ながらお喋りするのは最高です。

ゼミナールについて伺います。ゼミではどんなことをやっていますか?

主に学んで欲しいことは3つあります。まず一つ目は、「卒業してから20年くらいの間に世の中がどう変わるのか理解すること」です。そのために人類学以外の本を読むこともあります。ニつ目は、「この先どのように地域に関わっていくか考えること」。地域にこだわった質の高いエスノグラフィーを読み、地域の声を拾い上げることのできる人間になってほしいです。そして三つ目は「学生自身が、本を読んだことと日頃考えることを結びつけること」です。立派な議論をしようと意気込まなくてもいいんです。むしろ20代ならではの考えをどんどん発言して欲しい。そこから本で読んだことと関連付けて主体的に考えるようになってほしいですね。

先生のゼミの先輩方の卒論ではどのようなテーマが扱われていましたか?

うちのゼミは毎年ユニークなテーマが多いです。岩木山麓の集落で竹細工について研究した学生は、その集落に1年間通いつめて実際に竹細工を編み続け、卒業後そこに移住しました。ついには竹細工職人になると本場大分県にまで行って勉強し、7年前大分の県知事賞をもらいました。まさに、人生を変えた卒論ですね。
あと、こぎん刺しについて研究した卒論もとても良かったです。その学生は非常に優秀な学生だったんですが、僕はとりあえず「あんまり調査するな、ひたすらこぎんを編め」と。すると次第に、やっているからこそわかる独特な感覚が体得できたといいます。自分の身体を使って実践することで、対象としている人々の中に溶けこむことができる。これが、結果的に深みのある調査につながったんですね。

では、先生にとって、地域行動コースの魅力とは何でしょうか。

このコースは、地域の声に耳を傾けることを大切にしています。また、それだけでなく調査を通してコミュニケーション能力が高まり、仲間たちとチームワークをとることもできます。僕は、ここに魅力があると考えています。だから、このコースの学生にはもっと公務員になってほしい。なぜかというと、実際に体を動かしながら地域の人々の声を聞き取り、問題に向き合うことができるからです。また、NPOやNGOを自分たちで作ってほしいとも考えています。コース卒業生の中には、地域のためにアイディアを提案している人がたくさんいます。ぜひそういう視点をもち、地域に本当に必要なことを考えて、自ら行動していくような団体に参加したり、作ったりしてほしいです。今、コースで一緒にいる仲間たちはすごく良い仲間だと思います。みんな体を張って地域の声に耳を傾けられる能力があるので、実際に社会に役立つような活動に身を投じてみてほしいです。このコースの学生なら、できるはずです。

最後に、地域行動コースを目指している高校生に一言お願いします。

地域の未来を創るのはきみだ!!

ありがとうございました。

専攻文化人類学
出身地岐阜県
行ったことのある国ケニア、エチオピア、セネガル、マリ、イギリス、ドイツ、ノルウェー、カナダ、アメリカ、オーストラリア
その中で好きな国ケニア(みんながオープン!)
休日の過ごし方愛犬ルーシーの散歩
趣味
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