弘前大学人文社会科学部
社会経営課程 地域行動コース


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社会調査実習 担当教員

杉山祐子教授

学生たちによるインタビュー

先生の専攻は何ですか?

学部のときは社会人類学、文化人類学、先史学を学びました。
大学院のときは人類学、とくに生態人類学を専攻しました。
生態人類学は、文化や社会を人間と環境との相互作用の過程としてみようとします。社会や文化の見方の枠組みの問題なんですよ。生業の技術やそれを支える価値観、社会関係や社会的なしくみなどを全体のシステムとして捉えるやりかたです。

その分野を研究しようと決めた理由を教えてください。

もともと日本の考古学や古代史を学ぼうと思っていたんですが、オーストラリアに行ったとき、アボリジニの文化や文化人類学の研究者に出会って、異なる文化や社会を研究する学問があることを知りました。帰国後、ある講演会でアフリカ熱帯雨林の狩猟採集民ピグミーの社会でフィールドワークをしている方の話を聞き、「分かち合い」を基本にするピグミーの人びとの熱帯林との関わり方や社会の様子、考え方がとても魅力的に思えました。それが生態人類学との最初の出会いでしたが、こんな研究をしてみたいなと思いました。学部時代の恩師が環境に目を向けた先史学を専門にしていたことも大きいです。

今はどのような調査を行っていますか?

今は、アフリカのザンビアとタンザニア、日本では青森県を中心とする地域でフィールドワークをしています。どちらも、グローバル化や近代化による社会の変化と、変化のなかにみえる人びとの営みや主体的な工夫に焦点をあてています。
アフリカでは、地元の人たちが地域の自然環境に即してつくりあげてきた在来農法を切り口に、人びとが自然をどのように認知して技術を発達させてきたのか、そこからの生産物を人とどう分け合っているのか、分け合うことにどういう価値観が反映されているのかなどから、社会や文化のありようを考えてきました。在来農法は遅れていると考えられがちですが、理系の研究者と一緒に研究を進めると、地域の環境の特性に非常によく適合した科学的合理性をもっているだけでなく、つねに新しいものを取り入れながら変わってきている、アップデートされているということがわかりました。外から見ると伝統的で変わっていないように見えても、実は近代化などの変化に対応したイノベーションの連続だということに気づき、今見ているものを地域の人たちによるイノベーションの歴史として見直してみようということを考えているんです。その中でも特に女の人の工夫がおもしろいんですよ。私自身女性なので、女の人の生活空間での調査がしやすかったですね。ジェンダーや世代に注目してみると、性差や年代で知識の蓄え方や伝承の仕方が違い、社会の見え方も違うんです。そこがすごくおもしろくて!
日本の農村ともつながるところもあるんですよ。地域の人たちがいろいろな工夫をしながら新しいものを生み出すこと―その過程では、モノや技術だけでなく人の新しいつながりが生まれるんです。新しい社会関係ができていくのっておもしろいですよね。そういうダイナミックな人の動き・社会の動きはアフリカだけでなく日本でも見えますね。 地域を限らず同じ枠組みで比較すると、共通する課題がみえてきて「現代社会ってどうなってるの?」ということが大きく考えられるのではないでしょうか。

ゼミナールについて伺います。先生のゼミではどんなことをやっていますか?

最初に人類学の基本的な理論や方法をまずは勉強します。それからそれに関連する論文を読んでいくという感じですね。ゼミ生の関心を反映させながら、内容は毎年変えています。
ゼミでは、ディスカッションきちんとできるようにしたいですね。ゼミ生には、他の人とのやりとりの中で話をまとめて結論をつくっていく感じを味わってほしいんです。本で学んだことを自分の日常に引き付けて解釈するという見方を身につけられたらいいなと思いますね。

先生のゼミの先輩方の卒論ではどのようなテーマが扱われていましたか?

いろいろですね。地域活性化関係で文化観光、移動販売や直売所、方言の資源化など、まつりや信仰関係としてねぷた祭りや三社大祭とモダニティ、商品化される呪具など、コミュニケーション関係では、電車内の人びとの行動、「ぼっち飯」、ネットコミュニティ、モノに注目した「土産物研究」や「文字使用」、「左利き」の研究などがあります。それぞれの学生が自分の関心にしたがってテーマを見つけていろいろつくっていく感じですね。

では、先生にとって、地域行動コースの魅力とは何でしょうか。

  1. 現場にがっつり出るところですね。 現場に出て、生きている人と直接出合って実感を持ちながら課題を見つけたり、課題を解くヒントや材料を探すというプロセスを最初から最後までできるのは地域行動コースの醍醐味ですね!
  2. その過程で他の人と何かを一緒につくるということを経験できますよね。
  3. 大学の中にいたら絶対に会えないような人たちと会って、普段の暮らしだったら絶対しないような経験ができること。それは結構魅力的! 普通の大人とも話しができるようになりますよね。学生の意見も聞きたいところです(笑)

最後に、地域行動コースを目指している高校生に一言お願いします。

現場から人と社会を知る視覚と行動するスキル。身につけたいならこのコースへどうぞ。

ありがとうございました。

専攻文化人類学
出身地東京都
行ったことのある国ニューカレドニア(フランス領)、オーストラリア、アメリカ(西海岸)、フンランド、ベトナム、ザンビア、タンザニア、ケニア、インド、イギリス、フランス、スイス
その中で好きな国ニューカレドニア:学部の2年生の時に初めて行った外国でした。一週間くらい滞在しました。何もかも珍しく、言葉が通じないのが大変でしたが、そこがまたおもしろかった。海がきれいで、白い砂浜が印象的でした。
休日の過ごし方
趣味旅行、研究(?)
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