「倫理」と聞くと、どうしても「道徳・モラル」といったイメージがつきまとうかもしれません。しかし、前近代(古代~中世~近世)から近代そして近現代にわたる日本思想史の視座から改めて捉えなおしてみるとき、一概に「道徳・モラル」といった既成概念には収束しえない“日本人らしさ”がみえてきます。とりわけて日本倫理思想史は、西洋哲学倫理学と異なり、必ずしも個別の思想家による文献や発言から構築されているわけではありません。過去から現代にいたるあらゆる諸事象すべてが研究対象となる可能性を秘めているのです。
日本倫理思想史は、基本的な倫理思想概念をベースに、日本の思想・文化・歴史・文芸の視座から時代縦断・ジャンル横断しながら学術的にアプローチすることによって、過去と現代を往還する“日本人像”の再発見をめざす研究です。
日本倫理思想史ゼミでは、基本的にゼミ生による研究報告会と個別の研究指導で進めています。本文研究(テキスト・クリティーク)の方策修得と並行して、卒論テーマを試行錯誤しています。興味関心のある時代やジャンルを基調として、文献講読・資料調査・思惟思考することで、自分ならではのテーマ設定・アプローチ方策を修得し、最終目標として《卒業論文》を完成させてゆきます。
専門科目「日本倫理思想史」に関する講義・演習では、時間倫理×歴史認識・生命倫理×うらない文化×擬似科学・宗教倫理×信仰史(神仏習合・神仏分離)・生活倫理×文芸思想などのテーマ論から日本思想史にアプローチします。また、学部基本科目「哲学倫理入門」では、〈哲学〉するとはどういうことか?〈倫理学〉とはどのような学問なのか?――この素朴かつ純粋な疑問に対して、日本思想史研究の視座からアプローチしてゆきます。身近な時事テーマから形而上学的テーマにおよぶまで、みなさんなりに〈考える〉トレーニングを積みあげながら、ひろく日本の思想・歴史・文学・文化を研究するための入門編です。その他、コース設定のオムニバス講義では文化資源学としての日本思想史を講義・実習しています。
日本の思想・歴史・文学・文化に対する興味関心と学習意欲さえ持ちあわせていれば、予備知識の有無は問いません。ひろく「日本学」研究の基盤・応用として活用してみてほしいと思います。