弘前大学人文社会科学部
文化創生課程 文化資源学コース


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ゼミ・研究室紹介

芸術史研究室/佐々木 あすか(助教)

はじめに

 芸術史研究室では、おもに日本の美術作品を対象に、その造形と文化、歴史について学びます。こうした美術作品の歴史を扱う学問分野を、「美術史」といいます。
 高校までに学ぶ歴史の教科書にも、文化史の項目があると思います。そして資料集には、その時代を代表する絵画、彫刻、工芸品などが紹介されています。美術史では、こうした文化史の項目を深めていくことになります。


芸術史、日本美術史で学べること

 日本の美術作品を対象に、美術史ではどのようなことを学ぶのでしょうか?また、高校で学ぶ歴史とは何が違うのでしょうか?美術史の視点や方法はさまざまですが、以下に例を挙げたいと思います。
 まずひとつ目は、作品そのものについての考察です。何を表現した作品なのか、表現の特徴はどこにあるのか、作品の見どころはどこにあるのか、どのような方法で制作されたのかなどについて考察することです。また作者や制作年代がわからない場合は、誰が、いつ頃つくったのかを推定します。ここで私自身の研究を例に挙げると、仏像において制作年代や作者を推定する場合に、時代や作者の特徴が出る仏像の服や髪型、細部の装飾などを判断材料にしています。そのためには、関連する作品を収集し、制作年がわかっている作品と比較する作業などもおこないます。これはひとつの方法にすぎませんが、大切なのは作品そのものをよく観察し、観察に基づく客観的な材料から論理的に考えることです。こうした作品そのものを分析することは、日本史、世界史などの歴史学とは異なる美術史ならではの方法です。
 ふたつ目は、作品がつくられた背景を知ることです。例えば、作者の生涯や、作品の依頼主は誰か、なぜつくられたのか、どのような時代背景があるのかなどを総合的に考えることです。こうした点は、作品そのものの考察に加え、史料(古文書・古記録)の読解・分析などをおこないます。
 このようなさまざまな視点や方法を用いて、作品の価値を見出し、歴史上に位置づけることを目指します。


担当授業について

 授業やゼミナールでは、ここまで紹介した美術史での分析、考察をおこなうための方法を段階的に学び、最終的には卒業論文の執筆を目指します。入門的な科目にあたる形態文化論では、日本の古代・中世の美術作品を取り上げ、絵画、仏像、工芸品などの作品の見方、分析方法の基礎を学びます。2年生の美術史実習、3年生の美術史資料実習は、観察に基づく作品記述の方法や、資料収集、分析の方法などを実践的に学びます。これらの実習科目は西洋考古学の宮坂先生と2人で担当し、日本美術に限らず、西洋美術も取り扱います。また可能な限り美術館、博物館などの見学をおこない、実際の作品を間近に見る経験を重視しています。


研究紹介

 私自身の研究について紹介しますと、専門分野は日本の仏像で、平安時代後期から鎌倉時代の仏像を研究対象にしています。皆さんも一度は奈良県にある東大寺南大門の金剛力士像(仁王像)の写真などを見たことがあるのではないかと思いますが、その仁王をつくった仏師運慶を研究テーマにしてきました。なかでも運慶とその父康慶の影響関係に興味があり、それぞれがつくった仏像について、どのような造形上の影響関係があるのかを研究してきました。近年は運慶と同時代の別系統の仏師の研究も進め、東北地方の仏像の研究もおこなっています。今後は、青森県内を中心とした北東北の仏像調査にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 これまでの研究活動のなかで、仏像を修理する現場に接する機会が多くありました。そこでは、概説書では知ることのできない仏像のつくり方や、仏像を守り伝えていくことの重要性を学びました。また研究で重視してきた作品調査は、寺院や博物館など所蔵者・関係者のご理解がなければ実現できません。研究、調査への温かいご厚意をいただくとともに、所蔵者として文化財を守り、次の世代へ守り伝えていくことへの思いも伺いました。美術史では過去の作品を研究対象にしていますが、そこには何百年もの間、作品を守り伝えてきた人々の歴史があり、それは現在にまでつながっています。そうした作品が伝えられてきた歴史、作品を守り伝える重要性についても、皆さんと学んでいくことができればと考えています。


おわりに

 私自身の専門は日本の仏像ですが、芸術史研究室では日本美術全般を対象にしています。作品をみた時に、この作品は好きと思うことがあると思います。また、きれい、迫力がある、などと感じることもあるでしょう。では、作品から受ける感想は何に起因しているのでしょうか?そうした作品から感じる魅力をより論理的に分析し、作品への理解を深めたい方、作品とそれを取り巻く人々や時代背景を学びたい方などと、さまざまな時代、分野の日本美術作品について一緒に学んでいきたいと思います。


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