中国哲学とは、西洋哲学・印度哲学に対するものとして、日本の学者が命名したものであって、中国における従来の経学・諸子学・宋明理学・道教・仏教等を一括したものです。つまり、古代から近代にかけて中国人により生み出されてきた思想全般を指し示しています。その思想全般とは、中国人が宇宙、自然、人間社会等について、どのように認識したのか、どのように解釈したのか、どのように行動したのかに関するすべてのものです。その思想を把握するため、まずは古典文献を正確に理解することが基本だとされます。そして、その思想の流れを分析するため、古典文献を通じ、歴史背景や社会背景を考察することが必要です。本研究室では、漢文の読解力を養成しつつ、古典文献の考証・分析修得を目指します。また、中国思想の形成や展開を把握し、独自の問題意識を涵養し、論文の執筆・完成を目指します。
漢文の原典を通じて、中国の科学・宗教・文化・芸術などの諸分野を皆様とともに学びます。文献解読、文献調査や現地調査をすることで、自分の関心あるテーマや原典に思想史的にアプローチし、卒業論文を完成させます。
●3年次ゼミ
古典文献を会読、発表します。文献の扱い方を学び、その思想を理解します。各自が関心あるテーマについて、先行研究を収集し、調査対象や研究方法を決めます。
●4年次ゼミ
卒論に向けて、論文構想発表・中間発表を行い、意見交換をしながら、論文の完成を目指します。
このゼミナールでは、各自の趣味や関心に沿う自由な研究を行って頂く予定ですので、より高い主体性、能動的な学習・研究姿勢が必要とされます。
私は中国近世の道教と医学思想について研究しています。道教とは、中国民族の固有の生活文化のなかの生活信条、宗教的信仰を基礎とした、中国の代表的な民族宗教です。中国の歴史、風土、地域的条件のなかで、政治や社会、文化などと関連しながら展開された生活文化を基礎としています。後漢末に、不老長生を目的として成立した道教は、成立以来、養生術がその中核に据えられてきました。特に宋代になり、内丹と呼ばれる精神的な修養法が道士たちの間で実践され流行したこともあり、養生術は、道教に閉じることなく、伝統医学、仏教、儒教の心身観、修養法にも深く影響しました。本ゼミナールでも、各自の研究手法で、宗教、医学、科学、芸術などの様々な視点から、東アジア思想史における宇宙・生死・鬼神に関する理解を深めることを期待します。また、研究方法として、中国古典の研究は本文研究と教義研究と二種類に分けられますが、この二者には密接な関係があり、どちらも不可欠です。本文研究について、例えば、書誌学や文献学の手法を利用し、古典文献の版本問題及びテキストの文字問題を考察することが挙げられます。教義研究について、宗教学の手法を利用し東アジアの宗教の教義、儀礼、教団研究、或いは、その宗教の歴史、他の宗教との比較に関する考察です。本ゼミナールでは、いずれも扱います。