弘前大学人文社会科学部
社会経営課程 経済法律コース


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実習紹介

法学コース特設講義「子どもと法律」紹介

概要と特徴

 法学コース特設講義として開講している「子どもと法律」は、「非行」「虐待」「離婚」「親子関係」など子どもを取り巻く法律問題について、学生がグループでのディスカッションを行いながら解決方法を示していく授業です。
 この授業の特徴は、家庭裁判所調査官が実務経験を踏まえて法的課題に関するレクチャーをしてくれることにあります。このレクチャーで示された課題を中心に授業が展開されます。実務家によるレクチャーなので、具体例が豊富で、架空の事例を示しながら全体像を示すということもしていただいています。学生側からすれば、問題点をより具体的に把握することができます。
 家庭裁判所調査官から出される課題は結論部分のみが示されており、学生はその根拠づけを、グループワークを通じて考えていきます。法律の条文はもちろん、書籍や論文、統計資料などを持ち寄って、どのように説得的な説明をするかを徹底的に話し合っていきます。プレゼンテーション後の質疑応答においても、中心的なテーマになるのは根拠です。「結論」ではなく結論に至る「プロセス」を徹底的に考えていく点が、この授業の大きな特徴でもあります。
 人文学部と教育学部で共同開講している点も一つの特徴です。人文学部と教育学部で共通に関心を持つことができるであろう「子ども」に関するテーマを設定することで、それぞれ違う背景を持った学生が議論を交わすことができるような工夫がされています。違う専門的知識を有する学生が集うことで、違った観点からの議論が展開できるのもこの授業の特徴です。

授業の進め方

 基本的には、1つのテーマについて4回分の授業時間を使います。
 第1回目の授業では、まず家庭裁判所調査官のレクチャーが行われます。60分程のレクチャーの最後に課題が提示されます。その課題に関して、学生は自分の立場を決め、20分程で簡単なレポートを作成します。課題に関しては、賛成/反対を示せるものにしてあります。
 第2回目の授業では、最初に全員のレポートを、誰のものか分からないようにして全員に配布し、まずは各自でそれを読んでもらいます。それを踏まえた上で、前回の授業で示した立場を前提にグループ内でディスカッションを行います。この時間では、できるだけ賛成/反対が1つのグループの中に同じ人数含まれるようにグループを作り、それぞれの立場から意見交換をしていきます。
 第3回目の授業では、同じ意見を持つ学生同士でグループを組み、前回のディスカッションを踏まえて、自分たちの立場をより説得的に説明するとすればどのような根拠に基づいて説明すればいいかを話し合います。それを踏まえて、次回のプレゼンテーションの準備をします。

グループワークの様子

 第4回目の授業では、それぞれのグループから報告してもらい、それに基づいて質疑応答を行います。このプレゼンテーションでは、どのような根拠に基づいているかが重視され、質疑応答もその点を中心に行われます。

プレゼンテーションの様子

学生が作成したスライド
(上は「離婚」下は「虐待」に関するプレゼンテーション)

テーマと具体的な授業展開

「子どもと法律」は毎年進め方が若干異なっているので、ここでは、2015年度後期に行われた授業内容を紹介します。 テーマは、「離婚」「虐待」「非行」の3つを取り上げました。

《離婚》

 家庭裁判所調査官によるレクチャーでは、家事事件手続法や改正された民法など、まずは法律上の根拠が示され、その上で「子の意思」「子の利益」に関してお話を伺いました。そして、実務的な観点から、架空の事例に基づいて家事調停の様子などもお話いただきました。それを踏まえて、離婚という紛争解決手続きに子を参加させることについてどのように考えるかという課題が提示されました。
 グループワークでは、とくに子を「積極的に」参加させるという場合の「積極的に」の意味をどのように解すればいいのかを巡って議論が交わされました。
 プレゼンテーションでは、3つのグループのうち1つが積極的に参加させるべきと主張し、残りの2つのグループが子の参加は慎重にするべきと主張しました。

《虐待》

 家庭裁判所調査官によるレクチャーは、まず児童虐待の定義や現行法における親権の位置づけに関しての説明から始まりました。それから、架空の事例を挙げて「親権」の問題が「虐待」とどのようにかかわるかを明確にした上で、親権に関する家庭裁判所の手続きを説明していただきました。最後に、親権喪失または親権停止について、これを積極的にすべきか否かという課題が提示されました。
 グループワークでは、児童福祉法や民法が規定する「親権」に関する法の趣旨をどう考えるかを中心にして議論が交わされました。
 今回は圧倒的に積極的に考える学生が多く、2つのグループが積極的、1つのグループが慎重にという立場になりました。ただ、慎重派のグループは人数的にも少数になってしまいました。

《非行》

 家庭裁判所調査官によるレクチャーでは、少年法の理念などの説明に続いて、近時の少年法改正に関して詳細に示されました。また、少年事件が増えているか、あるいは凶悪化しているのかという点について、司法統計などを使った説明がなされました。さらに、少年審判手続きの全体像を把握するために、DVDの視聴なども行われました。それらを踏まえた上で、「厳罰化」に関する課題が示されました。
 このテーマに関しては、学生は全員厳罰化に反対する立場を採ったため、グループワーク・プレゼンテーションとも、仮に厳罰化に賛成の立場だったらというディベート的な発想を取り入れながら進めていきました。

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