調査地「青森県弘前市旧相馬村」
2017年度から2019年度まで3年間、人口減少や基幹産業のイメージに収まらない地域の魅力を探り出し、どうしたらそれを地域の方々とも共有できるのか試行錯誤してきました。
まず、自分たちで現場に足を運び、そこに住む方々と時間をともにしたときに気づく直感を大事にしました。何度も同じりんご農家に通い、まる1日農作業を一緒にしたり、毎年、お祭りやイベントの準備から片付けまで参加したりするなかで、耳にしたこと、目にしたものから、魅力を探り出すヒントを得ました。そのうえで、そうした発見を、どう表現したら、地域の方々と共有できるのか探ろうと、プレゼンテーションだけでなく現地での写真展、大学祭での物販などにチャレンジしてきました。
旧相馬村は単純な「過疎」に直面しているのではありませんでした。市町村合併以降、2010年代に20代、30代の若い層の流出が加速していました。また、基幹産業であるりんご栽培の規模拡大がすすむ一方で、規模の小さい農家では高齢化がすすんでいることもわかりました。したがって、若い世代の受け皿づくりが急務ですが、従来のりんごの栽培・販売のさらなる拡大といった経済面の方策だけでは十分と言えません。
一方、私たちが見いだした地域の魅力は、伝統行事を若い世代に配慮して少しずつ変えていることや、血のつながった子ども以外にりんご栽培の技術を継承する仕組みがあることでした。こうした、すでにある地域の取り組みが若い世代に響けば、地域の持続可能性につながるのではないか。そうした将来像を、地域の方々と少しずつ共有していきました。