調査地:青森県弘前市
一見自由に思われる私たちの日常生活は多くの「何時にどこにいなければならない」という「時空間的制約」の中で営まれています。人によってさまざまな制約がどのように存在しているのか、そしてそれがどのように地域・社会を作り出しているのかについて「時間地理学」の視点から考えています。
私たちの生活と密接に関わりながらも普段意識することの少ない「時間」と「空間」に着目し,学生自身がテーマ設定,調査設計をおこなう点です。 2022年度は,時間地理学の視点から(1)距離と時間がもたらす「負担感」の検証,(2)公共交通と自家用車の利便性比較と交通手段の選択,(3)冬季の降積雪が緊急車両に与える影響と関係者の対応の3テーマに取り組みました。
(1)では育った土地や普段の生活パターンが,私たちの「遠い」と感じる距離と時間に影響することが明らかになりました。(2)では通勤時間や目的地,あるいは出発地によって公共交通による移動と自家用車による移動の利便性が変動することが示されました。(3)では,降積雪時には緊急車両の一定時間内での到達可能範囲が狭まる一方で,現場の対応によりその狭まる範囲を最小限にとどめていることが明らかになりました。以上の調査はいずれも弘前での生活の実感に根ざしたものであり,身近なところから学術的な問いを明らかにしていくことができました。それぞれの結果について報告論文を共同執筆し,調査報告書を編纂しました。